建築士事務所の選び方
建築士事務所を探す
(1)コミュニケーション能力と相性
まず、建築士事務所選びにおいて最も大切なことは、1年以上の計画期間を通して、その建築士事務所と相互信頼を保っていけるかどうかということです。
建て主と建築士事務所のトラブルのほとんどは、ミスコミュニケーションが原因と考えられます。はじめは小さな行き違いでも、それが時間と共に膨らんでいき、最後にはお互いに全てが疑心暗鬼になってしまう、ということは通常の人間関係でもありがちなことです。
じっくりと話し合い、自分たちの意見に耳を傾けてくれるか、細かいことでもこちらが理解できるまで説明してくれるか、もっとわかりやすくいえば家を建て終わったあとでも、ずっとつきあっていきたい人物かを確認してください。
(2)設計能力
ここでいう設計能力とは、間取りやデザインの提案力ではなく、細かい部分の仕上げ方や雨じまいなどの住宅の性能面に関する設計能力です。
施主側に専門知識が無いと判断がつきづらいところですが、一つの基準となるのは経験の多さです。
住宅設計は実に多くの要素が含まれていて、大学や建築士試験の勉強だけでは、とても学びきれるものではありません。ほとんどのことは小さい失敗を繰り返しながら、時間をかけて実地で学ばなければならないのです。
過去の作品写真や資料を見せてもらったり、できれば過去に依頼した建て主に直接話を聞いて確認できる機会が持てれば、より安心です。その際に注意をしなければならないのは、見せられた資料が図面や模型、CGだけの時は、実際には設計を請け負っていない可能性がありますので、必ず写真を見せてもらってください。
また、その建築士事務所自身の責任で設計監理を行ったものではなく、かつて勤務していてた設計事務所の所員時代に一担当者として携わった建物や、工務店の下請けとして携わった建物の場合もありますので、確認が必要です。
(3)監理能力
設計能力と同じくらい大切な要素が監理能力です。
監理とは、建て主が承認した図面通りに工事が行われているかをチェックしたり、図面に表せない細かい部分の仕上げ方などを工務店に指示する仕事です。せっかくいい設計ができたとしても、マメで適切な監理ができないと、文字通り絵に描いた餅になってしまいます。
まず建築士事務所にどのくらいの頻度で監理をするかを聞いてください。遠隔地でない限り、平均して週に1度程度のペースで現場に足を運ぶ必要があります。
次に、施工を担当する工務店をどう選ぶかを聞いてください。建築士事務所が自分が紹介する工務店に過度にこだわる場合は、馴れ合いから監理が甘くなる可能性がありますので、その理由を確認しましょう。例えば、初めて仕事をする工務店よりも、過去に自分の設計を手掛けたことがある工務店であれば施工の技量が分かっていますし、早い段階で工務店に計画に参加してもらえばコスト削減に積極的に協力してくれるというメリットもあります。
(4)コストマネジメント能力
コストマネジメント能力とは、設計の段階でその家の工事費はいくらになるのかを見切る能力であり、また工務店からはじめの見積りが出たあとに、建て主の希望をなるべく適えた上で、予算内に収まるように設計を修正していく能力です。
これも、やはり経験の多さが一つの指標となります。(2)の設計能力と同様、過去の実作を見せてもらったり、できれば他の建て主から話を聞いて確認してください。
(5)デザイン能力
過去の作品集などを見せてもらい、お好みに合うかを確認してください。
その際に注意すべき点は、あまり細かい部分にこだわらないことです。1棟1棟はそれぞれの建て主の要望によってでき上がっていますので、例えば本棚の色などは参考になりません。複数の作品の中から共通して伝わってくるイメージや考え方などを大づかみで読み取ることが大切です。
(6)その他の注意点
建築士事務所によって、建築士事務所本人が最初から最後まで直接家づくりにかかわる場合と、重要な工程や全体の監修は本人でも、実際の業務は担当スタッフが行う場合があります。
建て主としては、少しでも多く本人に関わって欲しいところですが、本人がすべての業務を行う建築士事務所は駆け出しの方か、逆にこだわりが強いベテランで設計料がより高額な方かのどちらかがほとんどです。
一方、担当スタッフが多くをこなす場合は設計料がリーズナブルな反面、スタッフの技量や建て主との相性、建築士事務所本人とスタッフのコミュニケーションという要素が加わって連携が複雑になり、その分トラブルが起きる可能性が高まります。
それぞれ一長一短がありますので、どちらがいいということではなく、後で「こんなはずではなかった」というようなことがないように、建築士事務所本人がどの程度計画にかかわるかを確認し、納得の上で計画を進めてください。